2016年4月20日、国内自動車メーカーの中でも有数の歴史をもつ三菱自動車工業にて、燃費試験データの不正があったことが発覚しました。その結果、対象4車種が販売停止に。その後、共同開発先だった日産自動車が三菱自動車の発行済み株式34%を取得し、事実上傘下に収めることが発表されるなど、業界を揺るがす大ニュースが続きました。

 三菱自動車の不正発覚を機に他の自動車メーカーでも調査が実施され、国内販売台数3位のスズキにも同様の不正が見つかりました。スズキでは、その責を負い鈴木修会長が兼任していたCEO(最高経営責任者)を辞任しています。さらに、6月には三菱自動車の内部調査によって、販売終了した10車種についても不正があったことが判明。問題の根深さがうかがえます。

 これら一連の事件の流れから、2015年の世界的な大ニュースを想起する人は少なくないでしょう。6月に発覚したドイツの名門フォルクスワーゲン(VW)による排ガスデータ改ざんです。自社の利益のために公式数値をごまかしたという点で、日本メーカーの不祥事と同根の問題であることは間違いありません。

VWの不正発覚から半年足らずのうちにドイツで刊行された『Das Auto. Die Lüge』に、同国の自動車業界は震えあがりました。ドイツ人ジャーナリストがVWの不正を「氷山の一角」とし、ドイツの自動車業界全体にはびこる不正体質を、具体的に例示して明らかにしたからです。

 同書の著者は、燃費に関するドイツ車メーカーの公称値が現実とかけ離れていることが多いことを指摘。その原因を、メーカーが意図的にテスト段階でごまかしを行っているからだとします。つまり実際に道路を走行するのとは異なる条件でテストを実施しているということ。車体を軽くするために必要最小限の燃料しか積まない、サイドウィンドウを取り外す、タイヤの空気圧を低くするなど、涙ぐましい(?)努力の実態が暴かれています。

 同書は、ドイツ車メーカーがこうした不正を犯す理由として、ドイツ車の技術力が低下し、米日に遅れをとっていることに対する“焦り”を指摘します。では、日本メーカーの今回の不正についてはどうでしょう? 今回発覚したのは業界の「2トップ」(トヨタ、ホンダ)ではありません。私見ですが、国内メーカー同士の競争激化が原因の一つであることは否めない気がします。


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