7月10日は「何の日」でしょう? 今年2016年はもちろん、参議院選挙の投票日です。18歳以上でまだ済ませていない方は投票所へ。

 「7月10日」と聞いて、まず「納豆の日」と思いつく人は、毎朝の食卓に納豆が必ず並んでいるのかもしれません。総務省統計局の家計調査によれば、納豆の2015年の一世帯あたりの平均支出総額(年間)は3,640円。購入世帯数でいうと10,000世帯あたり7,575世帯、ざっくり日本人の4分の3が納豆を食べていることになります。好き嫌い両極端なのがこの食品の特徴ですが、「国民食」の一つと言っても差し支えないでしょう。

 ちなみに7月10日が「納豆の日」なのは「7(なな)」と「10(とう)」の語呂合わせによるものですが、はじめは関西納豆工業協同組合が関西における消費拡大を狙い、関西限定の記念日として1981年に定められたものです。その後1992年には全国納豆協同組合連合会が正式にこの日を全国的な「納豆の日」に決めました。

 納豆といえば「水戸市」というイメージをもつ人も多いはず。ですが、先ほどの家計調査をもとにしたランキングでは、2015年に水戸市は「5位」に陥落しています(2014年は2位、2013年は1位)。2015年の1位は福島市で、前橋市、盛岡市、山形市と続きます。いずれにせよ、上位は北関東と東北が占めています。

 さて、納豆は純粋な和食であり「あんなネバネバしたものを食べるのは日本人くらいなのでは?」と思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、それは正しくありません。
 近年、日本の納豆を輸出したり、国内のフレンチレストランの食材にしたりといった動きがあります。それだけではなく、実はミャンマーやタイ、ネパール、ブータンの山岳地帯、中国南部では、納豆が地域に根ざした伝統食として親しまれているのです。

 『謎のアジア納豆』(新潮社)では、ノンフィクション作家・高野秀行さんが、アジアに点在する「納豆を食する民族」を探し求め、その延長で日本納豆のルーツをも探っていきます。そうして高野さんが出会った「アジア納豆」の多くは、日本納豆と似ても似つかないものです。豆を発酵させるところは共通していますが、糸を引くものは少なく、せんべい状に固めたり、調味料のように汁に混ぜたりします。日本納豆のように生で食べるのは、むしろ少数派なのです。

 とりわけミャンマーの山岳地帯シャン州に住むシャン族が日常的に食する納豆は「トナオ」といい、現地の人々はそれを自分たちの「ソウルフード」だと言います(「トナオ」の語感が「納豆」に似ていますが、偶然だそうです)。そして高野さんはその後、「日本納豆発祥の地」とされる秋田県南の地を訪ね、愕然とします。シャン州と秋田県南の環境・風土が互いによく似ており、納豆の食べ方にも共通点があったのです。

 主に山間地の辺境地帯に点在するアジア納豆。その作り方や食べ方の多様性もさることながら、納豆というシンプルな食品に刻まれた各々の民族の歴史と文化の変遷に、高野さんは驚愕するばかり。視野を広げてみると、実に奥の深い、話題が“糸を引く”食品であることは間違いありません。


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謎のアジア納豆 -そして帰ってきた〈日本納豆〉』 高野 秀行 著 (新潮社)

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