リオデジャネイロ・オリンピック2016(リオ五輪)が、現地時間8月5日に開会しました。すでに各会場で熱戦が繰り広げられており、22日まで、205カ国・地域のトップアスリートたちが正々堂々としのぎを削ることになります。

 さまざまな問題が指摘されるものの、オリンピックが「平和の祭典」であるという原則は揺らいでいません。リオ五輪開会式をテレビ中継で鑑賞した時にも、それを実感することができました。参加国・地域数は過去最多。政治的に対立したり、紛争の火種が絶えない国同士の選手たちが一堂に集い、ともにパレードします。とくに、初めて「難民チーム」が結成され10人の選手が参加するなど、今回の開会式は、今世界が直面している問題について考えさせられる場面が多かった気がします。

 惜しくも選考からもれましたが、リオ五輪のマラソン米国代表候補として注目を集めた選手に、ベッキー・ウェード選手がいます。2013年にカリフォルニア国際マラソン優勝という華々しいフルマラソンデビューを飾った同選手は、その数カ月前までの1年間、世界中を旅していました。その旅の経験と、そこで学んだこと、考えたことを自ら綴った『Run the World』という本が、米国のWilliam Morrows Paperbacksから、この7月に発刊されました。

 テキサス州のライス大学で陸上中長距離走者としてキャリアを積んだウェード選手は、大学卒業後、すべてのスケジュールを白紙に戻して旅に出ます。世界中の土地を実際に“走る”ことによって、国や地域ごとの「違い」を深く知りたい気持ちが募っての決断でした。異文化の体験によって自らの走りや、アスリートとしてのあり方を見つめ直すきっかけにしたいと考えたのです。

 訪れたのは日本を含む22カ国。日本では東京と京都での“走り”を経験しました。東京では、人の多さと道幅の狭さ、一般市民を含むランナーたちの規律正しい姿勢に触れ、京都では対照的な「大らかさ」を味わいます。鴨川沿いの幅の広い道で、タイムを気にせずのびのびと走れたのです。

 旅を終えたウェード選手は、しっかり計画を立てて練習を行う従来のアプローチに、「大らかさ」を融合することを目標に定めます。その最初の成果が、カリフォルニア国際マラソンでの優勝ということもできるでしょう。

 オリンピックでは、どうしても日本代表選手に目が向きがちですが、競い合うライバルチームとその国・地域に視線を移してみてはいかがでしょうか。ウェード選手ほどではないにしても、少しでも多様な価値観に触れ、そこで感じたことを自分の中に融合させることは、人間的成長にもつながります。そして、世界中の一人でも多くの人がそれを行うことが、世界平和への道を一歩前進させることになるのかもしれません。


SERENDIPは厳選した良書を3,000字(A4用紙3枚程度)のダイジェストにして、メールとウェブサイトで提供するサービスです。 詳しい説明とお申し込みはこちらから。

●会員の方は下記リンクから今回ご紹介した本のSERENDIPダイジェストが読めます
『「世界」を走る』(原題:Run the World : My 3,500-Mile Journey through Running Cultures Around the Globe))(海外書籍:アメリカ)Becky Wade 著 (William Morrow Paperbacks)

関連記事