8月も半ばを過ぎましたが、東京では日中の最高気温が連日30度を上回り、全国各地でも35度を超える猛暑日になる地域も続出しています。

 多くの人はこの暑さに辟易していることだと思いますが、一方で、嬉しい悲鳴を上げるのがビール業界です。キリンビールのホームページによれば、夏場の気温が1度上がるごとに、ビールの販売量が大びん100万本分増えるそうです。大びん一本約300円とすると、気温1度で3億円分の市場が動くという、なんとも豪快な話です。

 そんなビール業界に2001年から参入したのが岩手県盛岡市の地ビールメーカー、ベアレン醸造所です。ビールメーカーとしては後発ですが、いまや知る人ぞ知る地ビールの逸品として、全国で人気を博しています。

 ベアレン醸造所の共同創業者で専務取締役を務める嶌田洋一さんの著書『つなぐビール』(ポプラ社)によれば、同社の成功のカギの一つは、ビールづくりのコンセプトにあったそうです。

嶌田さんらがベアレンを起業した2001年は、最初の地ビールブームが去った直後だったそうです。しかも当時は日本人好みの味がつくれない業者が多く、地ビールには「不味い」「高い」というイメージがついてしまっていました。

 嶌田さんが打ち出したのは「中間球」というコンセプトでした。プロ野球選手と普通の人がキャッチボールするとき、プロが本気で投げたら普通の人はまず捕れません。かといって、ゆっくり山なりにボールを投げられてもおもしろくありません。楽しくキャッチボールをするには、両者の「中間球」を投げなければなりません。

 ベアレンが考えた「中間球」のひとつが、ケルシュという種類の、飲み口がよく軽やかでありながら、しっかりとした味わいと余韻のあるビールでした。同社が製造、販売したケルシュビールの「コローニア」は、嶌田さんの予想通り大当たり。試飲会後の販売で欠品が生じるほどの大人気商品になりました。

その後、先行する有名地ビール「銀河高原」との売り場争い、工場の事故などベアレンには数々の苦難が訪れます。しかし嶌田さんたちは、地域の人に愛される「飲み続けられるビール」を目指して諦めませんでした。そして2015年には主力商品の「ベアレン」が、日本ビアジャーナリスト協会主催「世界に伝えたい日本のクラフトビール」コンテストでグランプリを獲得します。

 最近ではスーパーの棚などでもよく見かけるようになった地ビール。それぞれの個性を味わうことで、作り手たちの情熱を感じとれるのではないでしょうか?


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SERENDIPダイジェスト 『つなぐビール』嶌田 洋一 著 (ポプラ社)

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