designed by Ray Che

 SERENDIPでは、『サードウェーブ』(ハーパーコリンズ・ジャパン、2016年6月刊)のダイジェストを7月22日に配信しました。(SERENDIP会員の方はこちらからダイジェストをご覧いただけます)  

 今では世界中の人々が当たり前のように使っているインターネット。ブロードバンド接続が普及した地域では、電気や水道と同じような生活のインフラとなっています。ですが、どんな物事にも「始まり」があります。

 インターネットは1960年代に米国防総省で軍事用に開発されたのが始まりとされています。その後学術用に使われ、現在のような一般向けの商用インターネットが始まったのは、80年代後半のことです。

 80年代末から90年代にかけて、米国で一般家庭や職場をインターネットに接続する、商用のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)が出現し始めます。そのうちの一つがAOL(アメリカン・オンライン)で、1989年に専用ソフトによる接続サービスを開始、その後世界最大級のISPに成長します。

 AOLは、世界のインターネットの今に続く土台を築くパイオニアの役割を果たしました。そのAOLの共同創業者の一人、スティーブ・ケース氏が初めて著したのが『サードウェーブ』です。

 AOLをはじめ、シスコ、スプリント、ヒューレット・パッカード、マイクロソフト、アップル、IBMなどの企業がインターネット普及の基盤を築いた時期を、同書ではインターネットの「第一の波」と名づけています。1999年ぐらいまでがそれにあたります。

 2000年ごろからは、第一の波で築き上げられたインフラの上に、さまざまな新しいサービスが花開いていきます。グーグル、ヤフーの検索エンジン、アマゾンやイーベイのネット通販、そしてフェイスブック、ツイッターのSNSなど。これが「第二の波」です。さらに2008年ごろからアップルのiPhoneやグーグルのAndroidを立役者とするモバイルムーブメントも起こります。

 そして今まさに、私たちが差しかかろうとしているのが「第三の波」です。これは「IoE(Internet of Everything:あらゆるモノのインターネット)」の時代。これまでインターネットの活用が前提でなかった産業でのネット活用が進み、インターネットが本当の意味での基本インフラになる世界が出現します。たとえば医療、教育、食品などの産業で、インターネットによる革新が始まります。いや、もうすでに始まっているのです。

 ケース氏は、第三の波における革新には、第一の波での経験が役に立つと指摘します。ケース氏のAOLはじめとする第一の波のパイオニアたちは、社会に向けて「インターネットとは何か」「なぜ必要なのか」を説明するところから始めなければなりませんでした。政府との交渉も必要でした。同様のことは、「新しい業界」にインターネットを持ち込もうとする第三の波のプレイヤーたちにも必要になるということです。

 今は自ら会長を務めるケース財団で若き起業家たちの支援するケース氏は、AOLでの経験を語りながら、第三の波のプレイヤーたちに熱いエールを送ります。この本を読むことで、私たちも、新しい時代の幕開けに立ち会える幸運を味わえることでしょう。

関連記事