SERENDIPでは、『ネット炎上の研究』(勁草書房、2016年4月刊)のダイジェストを6月1日に配信しました。(SERENDIP会員の方はこちらからダイジェストをご覧いただけます)

ある人物や企業が発信した内容や行った行為について、ソーシャルメディアに批判的なコメントが殺到すること――いわゆる「ネット炎上」は、インターネット社会における負の側面として多くの人が知る現象ではないでしょうか。

 炎上の現場を覗いてみると、非常に多くの人が参加しているように見えます。しかしそんな炎上の“火付け役”となっている参加者は、ネットユーザーの1%にも満たないそうです。

 そんな事実を明らかにしたのが、慶應義塾大学で計量経済学を研究している田中辰雄准教授と、国際大学で同じく計量経済学を専門としている山口真一助教授です。二人の共書『ネット炎上の研究』では、その研究プロセスと結果の解説に加え、炎上を防止する新たなSNSの形が提案されています。

 炎上で批判的なコメントを行うネットユーザーは、「ノイジー・マイノリティ」と呼ばれることがあります。直訳すると「声の大きい少数派」。炎上に関わる人は声こそ大きい(活動が激しい)ものの、全体で見れば少数だという意味で使われる言葉です。本書ではこの層が、ネット全体の中で実際にどれくらいの比率を占めるのかを調査しています。

 著者が行った2万人程度のネットユーザーを対象とするアンケート調査によると、90%以上が「炎上」という現象を知ってはいるものの、実際に書き込みをしたことがあるのは1.1%にすぎないという結果が出ました。さらに炎上している当事者を直接攻撃するユーザーは1%を下回ります。1つの炎上事件あたりでは、その数字はさらに小さくなります。本書の計算によれば、ある炎上への参加者のうち、当事者に直接攻撃を行うようなユーザーは数人から数十人程度しかいないそうです。

 炎上している本人は、たくさんの人から攻撃されているように感じるかもしれません。しかしデータを精査すると、活動しているのはごく少数だとわかります。

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